#短歌

利休道歌 77

時ならず客の来らば点前をば 心は草にわざを慎しめ 「時ならず客」とは、不時の客、すなわち急に来られたお客さまのことです。 このようなお客さまにはご馳走の方法もないし、粗忽にしても失礼になります。 そこで、せめてお点前だけは充分に心を込めておも…

利休道歌 76

掛物をかけて置くには壁付を 三四分すかしておくことときく 掛物を掛けるときに、壁にべたっとくっつけて掛けてはいけません、ということです。 掛物と壁の間を三、四分(約9mm)透かして掛けましょう。 そうしないと、壁も掛物も傷めることになります。 雨が…

利休道歌 75

三幅の軸をかけるは中をかけ 軸さきをかけ次は軸もと 三幅対(さんぷくつい)の軸を床にかけるとき まず中央の軸をかけ、次に軸先を、すなわち上座になるものをかけ 最後に軸元、すなわち下座になるものをかけます。 軸先というのは、掛物の書き出しのほう、…

利休道歌 73

竹釘は皮目を上にうつぞかし 皮目を下になすこともあり 床や棚などに、竹釘を使用する場合が多いです。 どの竹釘も皮目を上にして打つのが原則です。 今日庵ではすべて皮目が上になっています。 皮目を上にすると滑りやすいといわれますが、 角度をつければ…

利休道歌 72

花入に大小あらば見合せよ かねをはずして打つがかねなり 花入の釘を打つのに、前の歌の寸法どおりに打たなくても良い、ということです。 「かね」とは寸法のことです。 花入の大小・床の高低大小によって、一番よく花が見える位置に打つわけです。 が、一度…

利休道歌 71

花入の折釘うつは地敷居より 三尺三寸五分余もあり 花入をかける折釘を打つのは、床正面の壁中央に打つので「中釘」ともいいます。 中釘を打つ位置は、地敷居すなわち床框から三尺三寸五分(約1m)の高さになります。 これは台目床(普通の畳の4分の3に…

利休道歌 69

うす板は床かまちより十七目 または十八十九目におけ 薄板は床にかざる花入の下に敷く板のことです。 床の奥から十七・十八・十九目に置く、あいまいになっているのは、 床の大小や花や花入によって変わってくるからでしょう。 花が一番よく見える場所に置け…

利休道歌 68

帛紗をば竪は九寸よこ巾は 八寸八分曲尺にせよ この帛紗の寸法は、利休の奥様の宗恩が定めたと言われています。 利休時代までの帛紗は今の古帛紗のようなもので、和巾(わきん)と言っていました。 昔の帛紗ということで「古帛紗」というわけです。 利休が秀…

利休道歌 67

茶巾をば長み布はば一尺に 横は五寸のかね尺としれ 普通の小茶巾の寸法のことです。 長さ一尺(約30cm)で横幅が五寸(約15cm)の麻の布です。 長さ、横幅とも一尺の大茶巾もあります。 「かね尺としれ」というのは、 寸法をはかるのに曲尺(かねし…

利休道歌 66

二畳台三畳台の水指は まづ九つ目に置くが法なり 二畳台・三畳台とは二畳台目・三畳台目のことです。 台目とは一畳の畳の長さを、台子の幅の寸法だけ切り縮めた畳のことです。 二畳台目と申しますと、丸畳が二畳あって他に台目畳がある、ということです。 台…

利休道歌 65

蓋置に三つ足あらば一つ足 まへにつかふと心得ておけ 蓋置には、三つ人形・三つ葉・五徳・三つ鳥居のように三本足のものがあります。 この歌は三つ人形の場合と考えたほうがいいかと思います。 三つ人形は3人の童子が手をつないで輪になっています。 そのう…

利休道歌 64

いにしえは名物などの香合へ 直にたきもの入れぬとぞきく いにしえに限らず、今もそうですよね。 基本的に香合には名物(古来有名な茶人に優秀な器と選定されたもの)がないと言われていますので 拝領物とか大事な香合のことを指しているのでしょう。 練った…

利休道歌 63

風炉の時菜籠にかね火箸 ぬり香合に白檀をたけ これは前の歌の風炉バージョンです。 菜籠(さいろう)とは籠製の炭斗です。 昔、菜を摘み入れる籠を、炭斗に利用したことから炭斗のことをこのように呼びます。 炭斗としては菜籠の方が古く、前出の瓢は後に好…

利休道歌 62

炉のうちは炭斗瓢柄の火箸 陶器香合ねり香としれ お茶をなさっている方なら、今更って思うでしょう。 利休以前から、炭斗(すみとり/炭手前のとき炭や火箸をなどを入れて持ち出す器)として 用いられていた瓢(ふくべ)は干瓢にする瓢ですが これを毎年口切…

利休道歌 61

いにしへは夜会などには床の内 掛物花はなしとこそきけ 「いにしへは」というのは、利休以前のことです。 その時代は、夜の茶会の場合、床には掛物も花も用いませんでした。 かすかな燈火では、掛物の字も読めないし、花もその影が壁に映ってうるさいからで…

利休道歌 60

燈火に油をつがば多くつげ 客にあかざる心得と知れ 夜咄の茶事には、燈心も長いものを用い、油も油皿になみなみとつぐのは お客さまにゆっくりと留まっていただくためです。 利休が夜の茶会を催して、夜も更け燈火が細々となったので、水屋の者を呼び 油を短…

利休道歌 59

ともしびに陰と陽との二つあり あかつき陰によひは陽なり これは前の歌のくり返しですね。 茶の湯では「陰」「陽」の関係をよくいいます。 今はあまり言われませんが、『南方録』(利休の教えの聞書き)には 道具を置き合わせるときに「曲尺割(かねわり)」…

利休道歌 58

暁は数奇屋のうちも行燈に 夜会などには短ケイを置け 茶の湯で使用する照明具は、行燈(あんどん)・短ケイ(たんけい/敬の下に木と書いてケイ) 手燭などがあります。 行燈は火のともる周囲を枠で囲み、それに紙が貼ってあり、中に火をともすので「間接照明…

利休道歌 57

名物の茶碗出たる茶の湯には 少し心得かはるとぞ知れ 茶会で、亭主から拝見に出された道具を、大切に扱うことは客の心得ですが 特に名物(古来有名な茶人によって優秀な茶器と選定されたもの)や 由緒ある茶碗ですすめられた時は、客としてその扱い方は、常…

利休道歌 56

羽箒は風炉は右羽よ炉の時は 左羽をば使ふとぞしる 炭手前に用いる羽箒は、風炉には右羽を、炉では左羽を使いなさい、ということです。 右羽は羽箒を手にとって、向かって右の羽が広いもの 左羽は左が広いもののことです。 陰陽五行の教えによりますと、風炉…

利休道歌 55

茶を振るは手先をふると思ふなよ 肱よりふれよそれが秘事なり わたしはお茶を点てるのが下手です。 この道歌のように、肘からふっているのですが・・・なかなか難しいです・・・。 手先だけでふるから、細かい泡がでない、というのですが・・・。 裏千家の場…

利休道歌 54

柄杓にて白湯と水とを汲むときは 汲むと思はじ持つと思はじ この歌は前の歌と同じような主旨です。 お釜のお湯や水指の水を「汲む」と思い、柄杓を「持つ」と思うから そちらの方に気をとられて、肘の方がお留守になってしまいます。 腕と柄杓が「一体」にな…

利休道歌 53

湯を汲みて茶碗に入るヽ其時の 柄杓のねぢは肱よりぞする お湯を汲んで茶碗に入れるときに、柄杓を持っている手は、肱(ひじ)から動かします。 こうしますとお湯は自然に茶碗に入ります。 肱を動かさず、手首だけをねじってお湯をいれようとすると 合(柄杓…

利休道歌 52

柄杓にて湯をくむ時の習には 三つの心得あるものぞかし この歌は、風炉の場合の教えです。 三つの心得の一は、湯を汲むときは、十分に汲まずに、九分目くらいまで汲む。 二は、湯は釜の底の湯を汲み、水は中央を汲む。 三は、油柄杓の禁止です。 二の説明を…

利休道歌 51

湯を汲むは柄杓に心月の輪の そこねぬやうに覚悟してくむ 柄杓の合(お湯の入る部分)と柄とがつなぎあわさったところを 「月の輪」または「月形(つきがた)」といいます。 合の月形になっているところに、月形に削った柄の先端を差し込んだだけで 接着剤な…

利休道歌 49

喚鐘は大と小とに中々に 大と五つの数をうつなり 喚鐘(かんしょう)とは座敷の書院の天井などにつるしてある釣鐘形の小振りの物で 夜咄の茶事(よばなしのちゃじ/冬季に日没から夜間に催す茶会)のときに、 後入(ごいり/懐石が終わった後、いったん席から…

利休道歌 48

小板にて濃茶をたてば茶巾をば 小板の端におくものぞかし 小板(こいた)というのは、風炉の敷板のことで、大板・長板に対する名称です。 炉を向切りにする時に、炉縁の向うに入れる板も小板というので それと区別するため普通は敷板(しきいた)と呼んでい…

利休道歌 47

余所などへ花をおくらば其花は 開きすぎしはやらぬものなり これは茶道だけでなく、日常生活でみなさんも心がけていらっしゃるのでは? 開きすぎた花を人に贈っては、先方が花入に生けようとする頃には、 花がしぼんでしまったり、葉が枯れかけたりして、役…

利休道歌 46

釣瓶こそ手は竪におけ蓋とらば 釜に近づく方と知るべし 釣瓶の水指は、先回の手桶とは違った置き方になり 利休好みの木地の釣瓶は、手を縦にして置きます。 釣瓶や手桶の水指は、炉・風炉とも用いますが 釣瓶はなるべく風炉に用いた方が、道具の取り合わせ上…

利休道歌 45

水指に手桶出さば手は横に 前の蓋とりさきに重ねよ 手桶水指の扱いを教えた歌です。 「手桶」とは本来、つくばいに水を運ぶための手付きの桶のことです。 割蓋(蓋が真ん中で割れている)になっています。 それを村田珠光が杉の木地で水指として好み、武野紹…