宗恵の『一日一禅』

宗恵の『一日一禅』 240【完】

本来無一物(ほんらいむいちもつ) 弟子たちの力量が祖師の法を伝える水準に達したのを悟った 禅宗五祖弘忍(ぐにん)は、各々の境地を詩に託して表明させ 優れたものを自らの後継者に指名することにしました。 そして 菩提本樹無し 明鏡も亦台に非ず 本来無…

宗恵の『一日一禅』 239

光陰如箭(こういんやのごとし) 「光」は日、「陰」は月のことですので 「光陰」は「月日」と言い換えることができます。 「箭の如し」とは弓から放たれた矢のことで 歳月が過ぎていくことは矢のように速いということですね。 同じ時間をいかに効率よく使う…

宗恵の『一日一禅』 238

座一走七(いちにざしてしちにはしる) 『虚堂録』巻九に見える「坐一走一」を出典とする句です。 「一」は「万法一に帰す」という場合の一、絶対なる真理をあらわし 「七」は日常的なさまざまな雑事を指し 「唯一絶対の真理に腰を落ち着けていながら、 その…

宗恵の『一日一禅』 237

歳月不人待(さいげつ ひとをまたず) この言葉は陶淵明の『雑詩十二首』の最初の詩にあります。 盛年重ねては来らず 一日再び晨(あした)なり難し 時に及んで当に勉励すべし 歳月人を待たず 意気盛んな年代が再び訪れることはない。また、一日に二度朝が来…

宗恵の『一日一禅』 236

松雪復翠(まつゆきまたみどり) 昨日13日は「事始め」。 昔はこの日にお正月の準備を始め、 飾り松を山から切り出してくる「松迎え」の習慣があったそうです。 松は本来、年の初めに迎える神の依り代の意味を持ち しだいに長寿を願う意味も加わって正月飾…

宗恵の『一日一禅』 235

雲外一閑身(うんがいのいちかんしん) 中国明代曹洞宗の僧・雲外雲岫(うんがいうんしゅう)は説法が上手なことで知られ 遠く朝鮮や日本からも多くの聴聞者が訪れたそうです。 その雲岫の言行を書き記した『雲外雲岫語録』に 三十余年故人無し 只だ雲外に留…

宗恵の『一日一禅』 234

一鉢千家飯(いっぱつせんかのめし) 一椀の鉢の中は、数え切れない人々から施された飯で満たされている、という 托鉢による乞食行(こつじきぎょう)の様子を表しています。 初期の仏教教団においては出家修行者による生産活動が禁じられていたので 毎日の…

宗恵の『一日一禅』 233

主客一如(しゅきゃくいちにょ) 昨日のお稽古場に掛っていた句です。 亭主と客の心が一つになってそのお茶席が進んでいく…。 もてなし、そのもてなしに応える心。 大寄せの茶会しか最近はお客様をお招きしたことはありませんが その心は変わりません。 来年…

宗恵の『一日一禅』 232

教外別伝不立文字(きょうげべつでん ふりゅうもんじ) 文字に頼らない、経典の教え以外の伝え方 という意味です。 「拈華微笑」のところでお話しましたが 禅の教えの神髄なんです。 「体得する」という言葉があります。 茶道のお点前はあれやこれや書いて覚…

宗恵の『一日一禅』 231

好雪片片(こうせつへんぺん) 中国宋代の禅の書『碧眼録』に載っているお話です。 ホウ居士が今の湖南省にある芍薬山の薬山惟儼(やくさんいげん)を訪ねた帰りに ひらひらと落ちてくる雪を指差しながら、見送りの惟儼の弟子たちに言いました。 「好雪片々…

宗恵の『一日一禅』 230

昨夜雪深月正明(さくやゆきふかく つきまさにあきらかなり) きょうの禅語は、振り続いた雪で一面の銀世界を月が明るく照らしている情景を表している句です。 しんと静まり返った雪景色が月の光に輝いて、静寂が一層深まっていくようです。 月を仏性、雪を…

宗恵の『一日一禅』 229

拈華微笑(ねんげみしょう) 昨日、お邪魔した新潟市白山神社境内「遊神亭」の裏千家男子の会による 市民呈茶席に掛けられていた句です。 お釈迦様がある日、金波羅華(こんぱらげ)という天上の妙花一枝を持って 説法の座に登られ、無言のまま大衆を見回され…

宗恵の『一日一禅』 228

三冬枯木花(さんとうこぼくのはな) 『虚堂録』巻一に見える 「三冬枯木の花 九夏寒巌の雪」 から採られた句です。 「三冬」とは孟冬(陰暦10月)・仲冬(11月)・季冬(12月)の冬期90日間を表し 「九夏」とは夏期90日間を表します。 冬に枯れ木…

宗恵の『一日一禅』 227

看看臘月尽(みよみよろうげつつく) 12月になりました。 みるみるうちに12月は終わってしまいますよ、という意味です。 特に気ぜわしい年末は一分一秒が大切に思えますが 一年365日、時間の長さは変わるわけではないので いつも年の暮れを迎えている…

宗恵の『一日一禅』 226

室閑茶味清(しつしずかなればちゃみきよし) 秋の夜長を皆さまどのようにお過ごしですか? 以前は読書やビーズワーク・パッチワークキルトなどをして過ごしていましたが 今では、ほとんどパソコンの前に座りっぱなし! 長男からは「そういうのを、ネット廃…

宗恵の『一日一禅』 225

歩歩是道場(ほぼこれどうじょう) 毎日の行動の一つ一つが、みな修行の場 目的に近づくための一歩一歩なのです。 また「道場」には「悟りの場」という意味もありますので わたしたちはいつも「悟りの場」にいるのだよ という意味にもなります。 どんな時で…

宗恵の『一日一禅』 224

寶樹多華果(ほうじゅかかおおし) 『妙法連華経』の一節です。 仏の世界には、花に満たされ果実が豊かに実る宝の木があって 衆生はその近くで遊び楽しんでいる、という意味だそうです。 この句が禅語として用いられる場合は 本来、わたしたちは仏性を内に持…

宗恵の『一日一禅』 223

心空境寂(しんくうなればきょうじゃく) 「境」とは外界の存在、 すなわち視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚・思考という 6種類の感覚器官によって認識される対象のこと。 具体的には姿かたち・音・香り・味などを指します。 これらは人間の心に欲望を起こさせ…

宗恵の『一日一禅』 222

北斗裡蔵身(ほくとりにみをかくす) 「北斗」とは北斗七星のことです。 北斗七星は天の中心とされている天の北極近くに位置することや 空にほぼ一年中その姿を現していることから、古来人々の尊崇の対象となってきました。 天に昇ってその北斗七星の中に身…

宗恵の『一日一禅』 221

十方一家風(じっぽういちかふう) 「家風」とは禅僧の悟りの境地や修行法 教化法から醸し出される風格、特徴のことを言います。 禅宗が様々な宗派に分かれたのは、この「家風」の相違によるものです。 人は皆同じ考えを持っている訳ではありません。 禅者そ…

宗恵の『一日一禅』 220

聴雨寒更盡 開門落葉多(あめをきいてかんこうつき もんをひらけばらくようおおし) 「推敲」の故事で知られる唐代の詩人賈島(かとう)の従弟で 詩僧として名高い無可の作 「秋従兄賈島に寄す」と題する詩の一節です。 一雨ごとに寒くなるこの時期、寒さに…

宗恵の『一日一禅』 219

松鶴千年契(しょうかくせんねんのちぎり) 日本でも中国でも、松と鶴は長寿の象徴とされます。 千年先までも変わらぬ愛を誓い合う夫婦の固い契りを表した句、でしょうか。 わたしが理想の夫婦として思い浮かぶのは 画家の平山郁夫ご夫妻です。 美術学校の同…

宗恵の『一日一禅』 218

招友供清茗(ともをまねいてせいめいをそなう) 親しい友人を招いて爽やかなお茶をふるまう、という意味です。 唐の陸羽が著した『茶経』に 「早く取るを茶といい、晩く取るを茗という」 とあり、茗とは摘み残しの固くなった葉で作った番茶にあたるもののよ…

宗恵の『一日一禅』 217

日新又日新(ひにあらたに またひにあらたなり) 朝目が覚めた時から、新しい一日が始まります。 昨日のことは昨日のこと。 また今日新たな「何か」が待っています。 反省すべき点は反省し、二度と繰り返さない。 昨日嫌な事があったとしても、今日は何か良…

宗恵の『一日一禅』 216

活卓卓孤迥迥(かったくたく こけいけい) 生き生きとした様子で高く聳え立ち、 他を圧してひとり抜きん出ていることを示す表現です。 比較する者の全くない、優れた力量を持つ禅修行者を形容する場合に用いられます。 激しい修行の末に悟りを開いた禅者もし…

宗恵の『一日一禅』 215

瑞気満高堂(ずいきこうどうにみつ) 「瑞気」とは、吉祥の相を持つ気、めでたい気のことで それが集まったものが慶事をもたらす「瑞雲」になるそうです。 縁起の良い「気」が室内に満ちあふれている様子を表した句です。 ブログでもちょこちょこ書いていま…

宗恵の『一日一禅』 214

吟風一様松(かぜにぎんずいちようのまつ) 『寒山詩』の有名な一節 「露に泣く千般の草 風に吟ず一様の松」 から採られた句です。 たくさんの草がしっとりと露に濡れ、松はすべて同じように風に吹かれて 枝を鳴らしているという、秋の日の情景。 言葉の響き…

宗恵の『一日一禅』 213

閑坐聴松風(かんざしてしょうふうをきく) 晩秋の夜、静かな場所を選んで腰を下ろし、松の枝を吹き抜ける風の声を 一人穏やかに聴いている様子を描いている。 竹に三つの穴を開けて作る楽器のうち、 大きいものを簫(しょう)、それより小さいものを籟(ら…

宗恵の『一日一禅』 212

聲香満天地(しょうこうてんちにみつ) 耳を澄ませば風の音が、鼻から大きく息を吸えば花の香りが天地に満ち満ちている。 そんな感動を、5日日曜日に長岡にあります「国営越後丘陵公園・ばら園」で体験いたしました。 今日は「立冬」。雨が降っています。 …

宗恵の『一日一禅』 211

茶遭知己喫(ちゃはちきにあいてきっす) 心通うお友達と、ゆったりとした気持ちで一碗のお茶をいただく。 あのお軸を掛け、お釜は…お花は…お茶碗は…水指は… 自分のできる範囲で心を込めたおもてなしをする。 そんなお茶会を今年中にできたらいいなぁ…。 宗…