数にまつわるお茶の話 「三」

「三夕の歌(さんせきのうた)」

見渡せば 花も紅葉もなかりけり 
       浦の苫屋(とまや)の 秋の夕暮   定家

さびしさに その色としもなかりけり
        槇(まき)立つ山の 秋の夕暮   寂連

心なき 身にも哀れは知られけり
        鴫(シギ)立つ沢の 秋の夕暮   西行

「秋の夕暮」を詠んだ『新古今和歌集』中の三首の名歌のこと。
略して「浦の苫屋」「槇立つ」「鴫立つ」の「三夕」といいます。

特に定家の歌は、『南方録』(なんぽうろく/利休の茶の湯伝書)に
武野紹鴎(たけのじょうおう/千利休茶の湯の師)が「侘び茶の心をあらわしている」
と説いた、と書かれている歌です。

松平不昧(まつだいらふまい/出雲松江藩藩主。大名茶人)が
それぞれの歌を筒に書いた「三夕」という三本一組の茶杓があります。