宗恵の「『一日一禅』 30
謙信は一挙に勝敗を決めようと、単騎、信玄の本陣をねらい
信玄が数人の部下とともに悠然と床几に腰掛けているところに
朝霧の中から突如として現れ、剣を大上段に振りかざし
「如何なるか是剣刃上の事」と叫びざまに切りつけました。
すると信玄は悠然として
「紅炉上一点の雪」と言いつつ鉄扇でこれを受け止めた……と伝えられています。
まあ、一騎打ちは事実としても、この問答は後世の作り話でしょうね。
赤々と燃え盛っている囲炉裏の上にちらりとひとひらの雪が舞い降りてきた。
しかしすぐにそれは跡形もなく消え去ってしまう。
次から次へ落ちてきても残らず無に帰していまいます。
その雪のように全ては無常であるから、常なるものとみなして執着心を起こさないように
と教えているのです。
また、雪のように些細な事は一瞬に消えてしまうので、大きな心持でいなさい
とも受け取れます。
ドンドン積もったりして。暖かな「炉」を用意する余裕がないのですね。