『中陰の花』
『中陰の花』 玄侑宗久 文春文庫 2005年
中陰とはこの世とあの世の中間
と表紙に書いてあります。
お寺の住職である主人公の則道とその妻圭子のお話です。
第125回芥川賞受賞作品です。
短い小説なのですが、心にしみて切なくなりました。
わたしも圭子と同じ経験をしたことがあるので、他人事でないせいもあります。
同じ経験をされたことの無い方には、果たしてこの小説が理解できるか、少し疑問なのですが
芥川賞を受賞したわけですから、やはりそれだけ人の心を打つものがあるのでしょう。
さてこの玄侑宗久氏。
1956年福島県生まれ。慶応大学卒業後さまざまな仕事を経験された後
昨年の2月1日の朝日新聞で大きく特集されていたのですが
夫が新聞を見て
「あっ、オレこの人と一緒に飯食ったことあるよ。」と言う。
「え~、この人芥川賞作家で禅のお坊さんだよ。」
「へぇ~そうなんだ。でもずっと前。学生の時だよ。」
詳しい事を聞くと、友達から「慶応の学生で考古学の話を聞きたいっていうヤツがいるから
ちょっと相手してくれないかな。」と頼まれた。
そして夫のアパートに玄侑氏が訪ねてきて、何故かご飯を炊いて晩御飯を一緒に食べたそうだ。
おかずは何だったのかも、どんな話をしたのかも忘れたが、
炊飯器でコシヒカリを炊いて食べた事だけは覚えていると言う。
でも、それもこの新聞を見るまですっかり忘れていたそうです。
人っていろいろな出会いがあるものなんですねぇ…。
玄侑氏はこのこと覚えているのかなぁ…。